ミーティングの最後に、石橋部長から「じゃあ最後にもう一度、全体像を説明してくれないか?」と頼まれた山本くん。「では、ご説明させていただきます」と説明を始めたのだが、「させていただきます」は余分のような気もする。はたしてこれでいいのか?
ようやくミーティングが終わったわね。課長が中途半端な説明をしたものだから、話が混乱しちゃって大変だったみたい。
山本くんも頑張ったけど、石橋部長もやさしいなあ。「じゃあ最後にもう一度、全体を説明してくれないか?」なんてね。あれ!?
どうしたの?
山本くんは「ご説明させていただきます」って言ったけど、くどくない?
そうね。「ご説明させていただきます」は、目上の人に「説明させてもらう」という意味の謙譲語「ご説明する」に「させていただく」をつけてしまったもので、過剰な印象ね。「説明させていただきます」でいいと思うわよ。
うーん、「させていただく」が余分じゃないかなって気がするんだよねえ。謙譲語「ご説明する」を使って「ご説明します」ではダメなの?石橋部長は「説明して」って言っているんだから、改めてお許しをもらうような言い方はしなくてもいいと思うんだけど。
なるほど、許可があるのに「させていただきます」をつけるのはくどい!ってことね。そうね、確かにこの場面では、「ご説明します」か、それのもう少し丁寧な言い方「ご説明いたします」の方がいいかもしれないわね。
でしょ?
ええ。「させていただく」は、本来、目上の相手の許しを得て何かするという場面で使う言葉だからね。
やっぱり。例えば、上司の家にお邪魔して、何かのコレクションを見せてもらうというような場面だよね。「部長のジッポーのコレクションを見せていただきたいのですが」とかさあ。
あ、犬山くん、それはいい例えね。相手の許可なしに、勝手に見ることはできないという場面よね。
うん。でも、部長が「部屋にあるから好きに見ていいよ」って許可をくれた場合に、「では見せていただきます」っていうのは、部長にくどいと思われるんじゃないかって心配なんだ。
そうねえ、確かにくどいと思う上司もいるかもしれないわね。でも、「許可を与えてやったのに『させていただきます』をつけないとはナマイキだ」と思う上司もいるのよねー。
えー?何それ?結局受け手によるってこと?
実はそうなのよね。相手の許しが必要な場合でなくても、「させていただく」をつけておいた方がやわらかい印象になるからね。最近のビジネスシーンの傾向からすると、どちらかといいうとつけておいた方が無難だって気もするわ。
そうかあ、山本君が言った「ご説明させていただきます」がいい場合もあるんだねえ。しかしこうなったら、何でもかんでも「させていただく」をつけた方がいいのかな?「今日はお話を聞かせていただき感動させていただきました」「昨日は自分でパスタを作って食べさせていただきました」とかね。
いいえ。「感動する」という自発的な心の動きや、「自分でパスタを作って食べる」のように自分ひとりで完結する行為について「させていただく」を使うのは、おかしいと思う人がほとんどだと思うわよ。
ううむ、奥が深いなあ。
- 10問のクイズでビジネス敬語力をスピードチェック > ビジネス敬語力診断テスト
- ビジネス敬語にまつわる疑問はサクッと解消 > ビジネス敬語お悩みQ&A
- オフィスでよくある場面ごとにビジネス敬語のトレーニング > シーン別実践ビジネス敬語