ビジネス敬語の達人

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敬語の接頭語の使い方を覚えよう

敬語の接頭語の使い方を覚えよう

目上の人のものや様子は、そのものをあらわす言葉の上に「御(お・ご・おん)」「貴」「尊」「令」「高」などをつけて尊敬語であらわします。

たとえば、ビジネス文書の書き出しによくある
「御社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます」
「貴社ますますご発展のこととお喜び申し上げます」
などのフレーズでおなじみ「御社(おんしゃ)」「貴社(きしゃ)」は、相手の会社をあらわす尊敬語なんですね。

他方、自分のものや様子を目上の人に言うときは、そのものを表す言葉の上に、「幣」「小」「拙」「愚」などをつけて謙譲語であらわします。たとえば、「弊社(へいしゃ)」「小社(しょうしゃ)」は、自分の会社をあらわす謙譲語です。
例1「弊社の鈴木が、いちど御社におうかがいしたいと申しております」
例2「小社の製品を貴社でも導入していただければと存じます」

このように、「御」「貴」「尊」「令」「高」などをつけて尊敬語にしたり、「弊」「小」「拙」「愚」などをつけて謙譲語にしたりできる言葉はほかにもたくさんあります。家、店、学校、銀行、職務上の地位、新聞、雑誌、その人の地位などなど・・・。

では、これらの言葉に、尊敬語をつくる「御」や謙譲語をつくる「弊」などをつけるとどうなるのか、いくつか具体例を見てみましょう。

尊敬語謙譲語
御宅(おんたく)拙宅(せったく)
貴店(きてん)弊店(へいてん)
銀行貴行(きこう)弊行(へいこう)
学校貴校(きこう)弊校(へいこう)
新聞貴紙(きし)弊紙(へいし)・小紙(しょうし)
雑誌貴誌(きし)弊誌(へいし)・小誌(しょうし)
地位貴職(きしょく)小職(しょうしょく)

さて、次に、これまたビジネス文書などでおなじみの「御厚意」、「御理解」、「御了承」、「御協力」「御意見」、これらも尊敬語です。目上の相手から受ける厚意、理解、了承、協力、意見などの特別なはからいを意味します。
例「この度の御厚意に心より感謝申し上げます」

また、「お手紙」「御説明」は、相手からもらう手紙や説明を意味する尊敬語です。さらに、目上の人に対するほめ言葉である「御立派ですね」「お美しい」の「御立派」「おきれい」は、相手のりっぱな様子やきれいな様子をあらわす尊敬語です。
例「ご子息はご立派におなりだそうですね」

なお、父、母、夫、妻など、家族の呼び名に「ご・お」「様」をつけると目上の人の家族をあらわすことができます。

目上の人の父、母、兄弟姉妹は「お父様」「お母様」「お兄様」「お姉様」「弟様」「妹様」と言います。

夫、妻、息子、娘は、ちょっと形がかわり、それぞれ順番に「ご主人様」「奥様」「ご子息(しそく)」「お嬢様」となります。

他方、自分の父、母、夫、妻、子をあらわす場合は、そのまま「父」「母」「夫」「妻」でかまいません。

妻や子供については、「愚」をつけて「愚妻」「愚息」「愚女」などという言い方をすることがありますが、日常会話ではあまり一般的ではないですね。妻、息子、娘そのままでかまわないでしょう。

さて、ここまで、ものや様子をあらわす敬語についてみてきましたが、「お」「御」がつくのは目上のひとについてのモノ、ものごと、様子だけですよね?とすると、
例1「この度は、ご挨拶が遅れまして大変失礼いたしました」
例2「一度ご説明をさせていただきたいと存じます」
例3「取り急ぎご返信申し上げます」

などのように、自分のすることに「お」「御」をつけていいのか?という疑問がわいてきた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

お手紙、御挨拶、御説明、御返信などにつく「お」「御」は、目上の相手からこちらに向かう場合には尊敬語になります。他方、こちらから目上の人に向かう場合には謙譲語となります。

同じ「お」「御」がついた言葉でも、誰から誰に向かうかよって、尊敬語になったり謙譲語になったりとコロコロ変わってくるんですね。

ですから、こちらから目上の人に向かう場合に、手紙、挨拶、返信、説明について「お」「御」をつけたとしても、それは正しい謙譲語の用い方ということで何ら問題はないのです。

さて、ここまでの解説をお読みになって、そろそろこんな不満を抱いた方もいらっしゃるかも知れませんね。

「お金、お湯、お茶、ご本みたいな、よく使う『お』や『ご』のつく言葉の説明がまだ出てこないけど、どうなってるの?」

お待たせしました。最後に、この点についてご説明いたします。

なぜこれらの表現が今まで出てこなかったのか?それは、「お金」「お湯」「お茶」「ご本」の「お」「ご」が、これまでご説明してきた目上の人を敬うはたらきを持つ敬語ではなく、単に「金」「湯」「茶」「本」をていねいに表現するはたらきを持つ敬語に過ぎないからなんです。

これら「お」「ご」のように、ものごとをていねいに表現するはたらきを持つ敬語を「丁寧語」といいます。

「お金」「お湯」「お茶」「ご本」の「お」「ご」のほかには、「お酒」「お料理」「お煙草」「お化粧」「お薬」「ご祝儀」「ご本」などというときの「お」「ご」も丁寧語にあたります。

さて、これらの「お」「ご」ですが、「どの言葉につけるのが正しいの?」と悩んだご経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?つけないと乱暴なような気がするけど、つけたらつけたでなんだか気持ち悪いような気もするし・・・。

実は、非常に悩ましいことではありますが、「お」「ご」をどの言葉につければいいのかということについては、これ!というはっきりした基準はないんです。そこで、ビジネスの場面に限定したものではあるんですが、私の個人的な見解を書きだしてみますので、ご参考いただければと思います。

●「お金」「お湯」「お茶」
「金」「湯」「茶」は、目上の人と話す場面でなかったとしても、「お」をつけないと不自然に響いてしまうような気がします。あえて無骨で粗野な印象を相手に与えたいというのでない限り、「お」をつけるほうが無難でしょうね。

●「お酒」「ご祝儀」「ご本」
「酒」「祝儀」「本」には、あらたまった場面では「お」「ご」をつけたほうが自然ではないでしょうか?

「佐藤様はお酒を召し上がりますか?」
「多数の方からご祝儀をいただきました」
「御社の社長は、今度ご本を出版なさるそうですね?」

という具合です。他方、あらたまった場面でないところでは、「酒買ってきたよ」とか、「あの本貸してよ」なんて言っても違和感ありませんよね?

●「お料理」「お煙草」「お化粧」「お薬」「お車」
「料理」「煙草」「化粧」「薬」「車」については、接客業の人や秘書的な役割の人が、仕事の場で「お」をつけて言うというのなら自然ですが、そうでないビジネスパーソンがこれをやってしまうと、聞き手に違和感を感じさせる可能性があるように思います。特に物腰やわらかな自分を演出したいというのでない限り、「お」はつけないほうが無難ではないでしょうか?

ちなみに丁寧語には、「休暇は29日からです」の「です」、「私は朝6時に起きます」の「ます」、「会議室はこちらでございます」の「ございます」というものもあります。

これらの丁寧語は、皆さん会社やアルバイト先などで、あまり意識なさることなく、自然にお使いになっているのではないかと思いますので、詳しい説明は割愛させていただきますね。

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