タカラ物産営業部の王(わん)くん。自社が主催するパーティーの招待客を迎えに行こうと、「当店は入り組んだ路地にあって、お分かりにくいかと存じますので、お迎えにあがります。」と申し出たが、「お分かりにくい」って正しい敬語?
自分が目上の人を「迎えに行く」ことを「お迎えに上がります」、自分が「思う」ことを「存じます」と言っているよ。王くんの敬語はどんどん上達しているなあ。
勉強家なのよね。でも「お分かりにくい」がねえ。
え?「お分かりにくい」でいいんじゃないの?だって、目上の人が「忙しい」ことを「お忙しい」、「美しい」ことを「お美しい」っていうじゃない。それと同じで、「分かりにくい」の尊敬語は「お分かりにくい」でいいんじゃない?
それが、そうではないのよねえ。「分かりにくい」は、「分かる」と「するのがむずかしい」という意味の「にくい」が合わさってできた言葉で、「美しい」「忙しい」とは言葉の性質が違うの。「お」をつけるだけでは尊敬語にならないのよね。
じゃ、どうすればいいの?
まず、「分かりにくい」を「分かる」+「にくい」に分解して、「分かる」を尊敬語にしてみましょう。
「お分かりになる」かな?
そう、その上で「にくい」をつける。
「お分かりになる」+「にくい」で「お分かりになりにくい」か!
正解!
王くんは、「お分かりになりにくいと存じますが」って言わなきゃいけなかったんだね。あ、ちょっと待って。「お分かりにくい」がまちがいなら、もしかして「お分かりやすい」も間違いなの?
よく気がついたわね。「分かりやすい」は、「分かる」と「するのが簡単」という意味の言葉「やすい」が合わさってできた言葉なのよね。さっきと同じやりかたで尊敬語にしてみてくれるかしら。
「分かる」を尊敬語にして、「お分かりになる」。それに「やすい」をつけて「お分かりになりやすい」だね。
そう!ちなみに、バーゲンセールなどで「買いやすい」の丁寧な表現としてよく使われている「お求めやすい」、これも実は間違いなのよね。
正しくは「お求めになりやすい」だね。「求める」を尊敬語の「お求めになる」にした上で、「やすい」をつければいいんだ。
そう。動詞と「やすい」「にくい」が合わさってできた言葉を尊敬語にするには、いちど「やすい」「にくい」を切り離すの。
その上で、動詞の部分を尊敬語に変えて、それからまた「やすい」「にくい」をつければいいんだね。よし、もう完璧!
じゃ、最後にもうひとつ。「食べにくい」を尊敬語にするとどうなるかしら?
簡単!「食べにくい」を「食べる」+「にくい」に分解して、「食べる」を「召し上がる」に変える。それに「にくい」をつけて「召し上がりにくい」。これが正解だね。
しっかりマスターできたわね。ほかの「やすい」「にくい」がつく言葉でも試してみてね。
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