Question
接頭語の「御(お、ご)」の使い方についての質問です。ある本でこう書かれているのを読んだことがあります。たとえば、相手方の<提案>や<確認>といった動作には、「お」や「ご」をつけて「ご提案」「ご確認」と言うけれども、自分から相手方に向かっての<質問>や<依頼>といった動作には、「ご」をつけてはいけないのだと。
ただ、同じく自分から相手方に向かう動作であっても、<報告><説明><確認>については、相手を立てるために「ご」をつけるのが正しいんだそうです。このへんの理屈については、考えれば考えるほど頭が混乱してきてしまいます。何かすっきり理解できて間違えないいい方法はありませんか?(S様)
Answer
こんにちは。接頭語「御(お、ご)」の使い方について、ご質問いただきありがとうございます。
おっしゃる通り、自分の「質問」「依頼」「報告」「確認」「説明」に「ご」をつけるかどうかは、悩むところですね。
ここは国語の専門家の間でも意見が分かれるところだそうですが、S様がお読みになった本の
- 自分から相手方に向かっての<質問>や<依頼>といった動作には、「ご」をつけてはいけない
- 自分から相手方に向かう動作であっても、<報告><説明><確認>については、相手を立てるために「ご」をつけるのが正しい
という解説は、一般的な説のひとつであると思われます。
ただ、区別するのって面倒ですよね。また、敬語的な正しさはどうあれ、目上の人とのメール・電話のやりとりや、接客の場面で「御(ご)」をつけないのは無礼であるような気がすることもあるのではないでしょうか。
そこで、おすすめしたいのは「質問」「依頼」「報告」「確認」「説明」のすべてに「ご」をつけてしまうという対処法です。
根拠は、国の「敬語の指針」に求めましょう。
【解説3:名詞の謙譲語Ⅰ】
「先生へのお手紙」「先生への御説明」のように,名詞についても,<向かう先>を立てる謙譲語Ⅰがある。
「敬語の指針」は、「御説明」は、目上の人の説明をあらわす尊敬語であると同時に、自分の目上の人に対する「説明」をあらわす謙譲語でもあるとしています。
この場合の「御」は、説明が向かう相手を立てるものであって、自分の「説明」を敬って言うものではないという考え方です。
この考え方によると、自分の「質問」「依頼」「報告」「確認」「説明」が相手に向かう場合、すべて「御(ご)」を付けてもOKということになります。
尊敬語じゃなくて謙譲語だよ、というわけです。
しかし、そう言われても「自分から相手方に向かっての<質問>や<依頼>といった動作には、「ご」をつけてはいけない」という説が気になる!という場合、どうすればいいでしょうか。
確かに「質問」「依頼」と「報告」「確認」「説明」の間には違いがあるんですよね。
それは、「質問」「依頼」は、向かう先の相手にリアクションを要求する営みであるということです。
「報告」「確認」「説明」は、一方的に相手に向かうことで完結しますが、「質問」「依頼」は相手へのお願いです。
単に向かう相手がいるものというより、お願いをするという自分側の行為だと考えると、「御(ご)」を付けないという使い方につなりやすいのではないでしょうか。
ただ、そう考えた場合も、「質問」「依頼」に「御(ご)」を付ける方法があります。
「質問する」「依頼する」という動詞の形で使い、それを謙譲語の型にあてはめてしまうことです。
「先生にご質問いたしますが…」
「先日、ご依頼申し上げた件ですが…」
この場合の「ご」は、謙譲語の型「ご~いたす」「ご~申し上げる」の一部なので、敬語の使い方として問題ありません。
こうすれば、「敬語としておかしい!」という批判を避けつつ、目上の人に対して失礼ではないか…?というモヤモヤも解消することができます。
なお、この手法は「報告」「確認」「説明」にも使うことができます。
「ご報告いたします」
「ご確認申し上げたいことがありまして」
「ご説明いたしましたように…」
という具合です。
以上をまとめますと、こうなります。
- 自分の「質問」「依頼」「報告」「確認」「説明」が相手に向かう場合は、「御(ご)」を付けてもOK。根拠は国の「敬語の指針」
- 自分のものに「御(ご)」をつけるのは抵抗がある場合は、「ご質問いたします」「ご依頼申し上げます」などとする。この場合の「ご」は謙譲語の型の一部なので、敬語的に問題なし
日常会話や文書作成の場面で、お役に立てましたら幸いです。
- 10問のクイズでビジネス敬語力をスピードチェック > ビジネス敬語力診断テスト
- ビジネス敬語にまつわる疑問はサクッと解消 > ビジネス敬語お悩みQ&A
- オフィスでよくある場面ごとにビジネス敬語のトレーニング > シーン別実践ビジネス敬語