
石橋部長も同席している朝礼の1分間スピーチ。今日の担当は山本くんで、テーマは昨晩のテレビ番組のこと。「昨日放送された特別番組を見られた方もいられると思うのですが・・・」と言ったら、敬語にうるさい総務の服部課長から、「せっかくいいことを言っているのに惜しい。その言葉遣い、どうにかならんかね」との指摘が。山本くんはキョトン。

山本くんが語りかけているのは、部長を含めた部署のみんなだ。だから山本くんは、「見る」「いる」を敬語を使って言っているんだね。でも、「いられる」って、おかしいよね。

そうね。「いられる」というのはおかしいわね。上の人の「いる」を敬語を使って言うなら「いらっしゃる」よ。

正しくは、「見られた方もいらっしゃると思うのですが」だね。

あと、敬語にうるさい服部課長のことだから、「見られた」にも抵抗があるんでしょうね。

どうして?上の人の「見る」を「見られる」というのは、敬語として間違ってないよね。

ええ。でも「見られる」は、軽い敬語だから、少なくとも、部長の前で話すときに使うのは、ふさわしくないと考えているんじゃないかしら。上の人の「見る」は他の言い方もできることだしね。

上の人の「見る」の他の言い方?うーん、なんだろう。「お見になる」?いや、変だ…あ、わかった、「拝見する」だ!「拝見した方もいらっしゃるかと思いますが」これでバッチリだね!

いいえ、バッチリどころか大間違いよ。「拝見する」は、自分が上の人に何かを見せてもらうことを言うときに使う言葉よ。上の人が見ることを「拝見する」なんて言ったらしかられるわよ。

あ、そうか。「拝」がつく言葉は、自分が上の人に何かをさせてもらうときに使う言葉だったね。例えば、上の人から借りた本を読んだというときに「お借りした本を拝読しました」なんて言ったりするんだよね。

そう。他に「あなたのうわさを聞きました」ということを「おうわさを拝聴しました」と言ったり、「資料を借ります」ということを「資料を拝借します」と言ったり、とにかく「拝」がつく敬語は、自分がすることに使うものなの。上の人のすることには絶対使わないでね。

分かった!えーと、上の人が見ることを言う敬語には、「見られる」のほかに何があるかって話だったね。ほかに何があるのかな?

目上の人の「見る」は、「見られる」のほか「ご覧になる」を使っていうこともできるのよ。「部長、昨日のあの番組、ご覧になりましたか」というように使うの。

「ご覧になる」かあ!それを使った方が「見られる」より丁寧でいいんだね?

そう、「見られる」より「ご覧になる」のほうが丁寧よ。「れる」がつくものは、やや軽い敬語表現とされているので、「れる」がつくもの以外の敬語があるときは、それを使った方がいいわね。

じゃ、会社で皆の前で話すような場面では「ご覧になる」を使った方がいいんだね。「きのうの特番をご覧になった方もいらっしゃると思います」という具合だね。

そうね。逆に、親しい先輩と話すときなど、敬意を払いつつも堅苦しくしたくないという時は、「見られる」を使うというように、場面によって使い分けるといいわね。

親しい先輩の場合は「見られる」の方がいい場合もあるんだね。「きのうの特番を見られましたか」という感じかな。

そうそう、その方が親しみを表現できてよかったりするのよね。

敬語って、使い分けることによって親しみを表現することもできるんだね。なんだ、敬語って面倒なものだとばかり思っていたけど、意外と便利なものなんじゃない!
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