自社主催のパーティーに出席している山本くん。社長から「君の頑張りはいつも聞いているよ」と声をかけられ、感激して「社長が僕のことを存じ上げていたとは光栄です!」と言ったのだが、後で石橋部長からたしなめられた。どうして?
敬語にあまりうるさくない石橋部長もさすがに指摘したわね。「それを言うなら『ご存じだったとは』だよ、山本くん」って。
「存じ上げる」は目上の人のことを「知っている」という謙譲語だよね。「社長が僕のことを存じ上げていたとは」って言っちゃうと、「社長がこんなエライ僕のことを知っていたとは」って意味になっちゃう。
そう。何様だ!ってなもんよね。社長の「知っている」を言うなら「ご存じだ」と言わなければね。部長の言ったとおり、「社長がご存じだったとは光栄です」が正解よ。
まあ、間違うのも分かるよ。「存じ上げる」と「ご存じだ」どちらも「存じ」が入っていてややこしいんだもの。
確かにね。「存じ上げる」と「ご存じだ」については、こういうパターンの間違いもあるわよ。「僕は社長のことは入社前からご存じでした」
これまた何様?って言われちゃうよね。えと、正しくは「入社前から存じ上げていました」だよね。あれ?
どうしたの?
知るの謙譲語には「存じる」というのもあったよね。「存じる」と「存じ上げる」はどう違うの?
「存じ上げる」は、目上の人のことを知っていると言う時にしか使えないの。それに対して、「存じる」は「知る」の改まった言い方だ、くらいに考えてもらえばいいわ。
「存じる」には相手を立てる働きはないの?
ないことはないわね。丁寧さは落ちるけれど、「社長のことは入社前から存じておりました」と言ってもいいのよ。ただ、「存じる」は、目上の人と関係のないものごとについて「知っている」と言うときにも使えるという話なの。
なるほどなあ。たとえば、「あの事件については存じております」と言うのはいいけど、「あの事件については存じ上げております」と言うのはおかしいってことだね。
そうそう。あと、「存じる」は「思う」の謙譲語でもあるという点で、「存じ上げる」とは違うわね。
あ、そうだね。たとえば「わかりにくいと思う」を「おわかりになりにくいと存じます」と言ったりするよね。
そうそう、「存じる」は「思う」「知っている」の謙譲語、「存じ上げる」は「目上の人のことを知っている」という謙譲語なのよね。
で、「ご存じだ」が目上の人が「知っている」ことをうやまって言う尊敬語だね。しっかりマスターして、山本くんみたいに間違えないようにしなきゃ!
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