会社を訪ねてきた人たちとの仕事の話が一段落し、ちょっとした雑談の場面になった。山本くんが趣味の話題を振ろうとして「お2人は釣りをいたされますか?」とたずねたら、2人は吹き出しそうな顔。どうしてだろう?
「いたす」は確か、自分が何かを「する」ということの改まった言い方ではなかったっけ…
そうよ。「いたす」は「する」の謙譲語。あーあ、笑われてしまったわ。
笑われちゃったね。「する」の尊敬語は「なさる」だよね。山本くんは「お2人は釣りはなさいますか?」と、たずねなければならなかったんだ。
そうそう。謙譲語「いたす」に「れる」をつけて「いたされる」と尊敬語っぽくしても、目上の人の「する」を言うことはできないから、気をつけてね。
尊敬語と謙譲語を間違えやすい動詞って、けっこうあるねえ。目上の人の「言う」を「申す」と言うと勘違いして、「課長の申されるとおりです」なんて言ってしまったり。
そうね。目上の人の「言う」は、敬語でどう言うのだったかしら?
「おっしゃる」または「言われる」でしょ。「課長のおっしゃるとおりです」「課長の言われるとおりです」が正解だよね。あと、目上の人が「来る」ことを「参られる」って言う間違いもありがちだよね。
ああ、ありがちねえ。「お客様が参られました」なんてね。
正しくは、「お客様がいらっしゃいました」「お客様がお越しになりました」「お客様がお見えになりました」などだよね。
そうね。あと、「課長はこの店の新しいメニューをもういただかれましたか?」なんていう間違いもありがち。「もう召し上がりましたか?」「もうお食べになりましたか?」
「お聞きになってください」とお願いしなければいけない場面で「うかがわれてください」と言ってしまったり、「いらっしゃいますか?」ってたずねるべきところで「おられますか?」と言ったり…うわあ、きりがないや。
いや、もうそのくらいじゃないかしら。目上の人の「する」は、「いたされる」ではなく「なさる」、「言う」は「申される」ではなく「おっしゃる」、「行く・来る」は「参られる」ではなく「いらっしゃる」、「食べる」は「いただかれる」ではなく「召し上がる」、「聞く・たずねる」は「うかがわれる」ではなく「お聞きになる」、「いる」は「おられる」ではなく「いらっしゃる」。日常でよく使うのは、このくらいよ。
あれ?たったの6つか。これなら憶えられそうだね。
あ、そうそう、忘れてた。拝読する、拝聴する、拝見する、拝借するなど「拝」のつく敬語も間違えやすいわね。「拝○する」は、自分が目上の人に対してすることを言う謙譲語だから、たとえ「れる」をつけて尊敬語っぽくしても、相手の動作について使ってはいけないの。
たとえば、「課長も拝読されましたか?」はダメなんだよね。「課長もお読みになりましたか?」が正解だ。
そう、「拝」がつくのは謙譲語。憶えておいてね!
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