Question
Q. 部下から業務の説明を受けるとき、私が腑におちない顔をしていると「言ってる意味わかりますか?」と問われることがあります。
とても失礼だと思うので、適切な言い方を指導したいのですが、相手が理解しているかどうかをたずねる敬語表現にはどのようなものがあるでしょうか?
私に対してはまあいいのですが、幹部や取引先の人にも 「意味わかりますか?」 と言ってしまうのではないかと思うと、ひやひやします。
Answer
こんにちは、小秋です。ご質問ありがとうございます。部下の「言ってる意味、分かりますか?」という発言。これは実際、よく聞かれるようになった表現だと思います。一緒に考えていきましょう。
「言ってる意味わかりますか?」には尊敬語も謙譲語も含まれていませんので、その段階で、目上の人に対する問いかけとしては不適切ということになります。
まずはこのフレーズを敬語に変換してみましょう。
自分の「言う」は「申し上げる」、相手の「わかる」は「おわかりになる」ですので、
「申し上げていることの意味がおわかりになりますか?」
となります。
さて、これで失礼さは解消されたでしょうか?
おそらく、解消されていないと感じる人がほとんどではないかと思います。どころか、かえって小馬鹿にされている度合が高まると感じる人もいるかもしれません。
思うにこれは、敬語の問題ではなく「わかる」という動詞の問題なのでしょう。
「わかる」を辞書で引くと「意味や区別などがはっきりする。理解する」などと書いてあります。
ただ、日常的な「わかる」の用法を見ると、どうも単に「理解する」という意味を超えて、「理解できる」という可能の意味を含んでいることが多いようです。
例えば、自分の理解能力を超えていることを「わからない」と言ってみたり、相手が理解できたかどうかを確認するときに「わかった?」「君にはわからないだろうけど」と言うことがありますよね。
この意味で「わかる」を考えると「わかりますか?」は、「理解する能力があるか?」と聞いたことになってしまいます。このあたりが失礼なニュアンスの出どころではないかと思います。
ちなみに、文化庁の「敬語の指針」(平成19年2月2日 文化審議会答申)https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/keigo_tosin.pdfでは、「4 能力などを直接尋ねることの問題」という項目があります。
そこでは、「部長は、フランス語もお話しになれるんですか。」などの例文が挙げられ、相手の能力を直接たずねたり、能力を測ったりする表現は、たとえ敬語として正しくても問題があるとされています。
さて、だとして、「わかりますか?」を使わずに相手が理解しているかどうかを聞き出すにはどうすればよいでしょうか。
おすすめなのは、相手の理解を問題にするのではなく、自分の説明が足りているかどうかを確認することです。
「これまでのご説明で不足している点はございませんでしょうか」
「ここまでのところで何かご質問はございませんでしょうか」
などはいかがでしょうか?これだと相手の能力を測っているニュアンスはなく、失礼に当たらないかと思います。
次に部下の方の「言ってる意味わかりますか?」に遭遇したら、「それは『あなたに私の言っていることの意味が理解できるか?』って意味になるけど」いいの?」と聞いてみましょう。
もし彼または彼女が不服そうなら、「言ってる意味わかりますか?」とそのまま返してあげると、気が付くかもしれません。
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