
Question

協力業者の人のミスで、誤ったデータをお客様に納入してしまい、お客様からお叱りを受けました。協力業者の担当の人から当社へは、「この度はお騒がせいたしまして申し訳ございません」と菓子折りつきで謝罪があったのですが、どうもスッキリしません。なんというか、謝罪が軽いというか、反省の気持ちが足りない気がします。こう思う私は心が狭いのでしょうか?
Answer

謝罪の場面でよく使われるフレーズ「この度はお騒がせいたしまして申し訳ございません」は適切か、というご質問ですね。一緒に考えていきましょう。
「お騒がせいたす」は「騒がせる」を「お~いたす」という謙譲語の型にあてはめたもので、敬語としては適切です。気になるのは、自身のミスを謝る場面で、「騒がせる」を使うことが適切かどうかという点ですね。
ここでちょっと辞書を見てみましょう。新明解国語辞典は「騒がせる」の運用方法を、こう説明しています。
謙譲表現「お騒がせする」は、自分にかかわることが原因で、いたずらにまわりの人を惑わせたりその好奇心をかきたてたりしたことに対する謝罪の言葉として用いられることがある。例、「この度、息子の件ではいろいろとお騒がせいたしました」
(出典:新明解国語辞典 第八版(P.612 さわがせる【騒がせる】)
「自分にかかわることが原因で、いたずらにまわりの人を惑わせたりその好奇心をかきたてたりしたことに対する謝罪の言葉」とあります。
思うに、この新明解の説明にのっとるなら、「お騒がせいたしました」と謝って済ませられる事態は、相手にとって害がないものです。
例えば、しばらく語学留学に出かけていて復帰したら、事情をしらない他部署の人たちの間では、入院したことにされていた、というような場面。すなわち、「本来なら謝らなくてもいいんだけど、自分のせいでざわつかせて何かごめんなさい」というようなケースです。
この点、ご質問のケースは、協力業者さんのミスにより誤ったデータが納入され、質問者にはお客様からお叱りを受けるという被害が発生しています。よって、「お騒がせいたしまして」でカバーできる謝罪の場面ではなく、そこは「反省の気持ちが足りないのではないか」とモヤモヤするのも、無理からぬことでしょう。
おそらく、協力業者さんが、責任の所在を明らかにした上で、損害に言及し、
「この度は、私どもの不始末で多大なご迷惑をおかけいたしました。申し訳ございません」
などと謝ってくれていれば、やりきれない思いを抱えることもなかったのではないでしょうか。質問者さんの心は狭くありません。ご安心ください。
以上、このページでは、ミスをして相手に損害を与えた人が、「この度はお騒がせいたしまして申し訳ございません」といって謝罪するのが適切かどうかを考えてみました。
まとめますと、「お騒がせいたしまして」は、敬語的には問題がないのですが、「騒がせる」は周囲を惑わせたり好奇心をかき立てたりすることなので、相手に迷惑をかけた場合の謝罪に使うのは不適切。
「本来は謝らなくていいんだけど」というニュアンスがありますので、使用には十分お気をつけください。
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