鹿の群れ
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Question

質問者様質問者様


会社の会議で参加者の一人が、複数の資料のことを「資料たち」と言っていて、強烈な違和感をおぼえました。

関係者に共有された何点かのパワーポイントをまとめて指したかったようですが、人や動物でないものに「たち」を付けるのは間違いだ、と指摘してもいいでしょうか。

最近、雑誌の記事などによくある「いとしの家具たち」「お気に入りの器たち」という使い方にもいらいらしますが、仕事の場面で、それも資料やファイルのような無機質なものに「たち」を使うのはなおさら不適切な気がします。

Answer

小秋小秋


「資料たち」「ファイルたち」のような「たち」の使い方はビジネスの場面で適切か?というご質問です。「いとしの家具たち」「お気に入りの器たち」という言い方も気になりますね。

「たち」は、名詞や代名詞につけて複数を表す言葉ですが、もともとは人のみに使われていたといいます。それも飛鳥時代から奈良時代あたりでは、高貴な人限定だったようですね。

そんな「たち」ですが、時代が下るにつれて敬意がうすれ、同等以下の人の複数にも使われるようになり、近年では人以外の存在にも範囲が拡大しています。

動植物や物など、どこまで「たち」が適用されるかについては、意見が分かれるようですね。

例えば「精選版 日本国語大辞典」(2023年5月27日閲覧)では、
「達・等(たち)」は「目下の者、一人称の代名詞、また擬人化して動物などにも用いる」
と説明されていますが、三省堂の「新明解国語辞典」(第八版)の「たち」の補足には
「人間以外の動植物や光・石などを擬人化して、その複数をも表す」
とあります。

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新明解の補足を採用するなら、擬人化できる場合は物+「たち」もアリということになりますね。

例えば、植物や器、文具、家具、楽器、本などが、人と同じように眺めたり、触れたり、世話をしたり、話しかけたり、いつくしんだりする存在である場合。

この場合、複数形は「緑たち」「器たち」「文具たち」「家具たち」「楽器たち」「本たち」となります。なんというか、「器類」「多数の本」と言うときより、愛情がこもった感じです。

ここで思うに、「資料たち」とおっしゃった発言者さんにとっては、「関係者に共有された何点かのパワーポイント」はそういう存在なのかもしれません。いかに1枚あたりの情報量と美観を両立するか、練りに練られた職人技のパワーポイントとか。

ただ問題は、パワーポイントという対象物を擬人化する行為が、今のところあまり一般的とは言えないことです。

対象が植物や雑貨や本などであれば、「その道の趣味人にとっては家族や恋人同然かもねー」という世間の共通認識があるような気がします。しかし、仕事で使う電子ファイルが愛する人のような存在であるということは、多くの人にとって理解しにくいところではないでしょうか。

ということで、「資料たち」という使い方は「間違い」とまでは言いたくないのですが、聞き手が強烈な違和感をおぼえる可能性は高く、ビジネスの場面では避けた方がよさそうだ、というのが今のところの結論です。

質問者様が「資料たち」の人にアドバイスする立場であるなら、複数の「資料」を言う場合、
「一連の資料」
「お配りした〇点の資料」
などの言い方が無難だよ、と伝えた方がいいかもしれません。

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