タカラ物産主催のパーティーが始まった。人なつこい山本くんは、積極的に招待客の皆さんに話しかけている。今話しているのは取引先銀行の中田さん。中田さんがアメリカの大学でMBAを取得したという情報を、営業の曽根課長から聞いていた山本くんは、「中田さんは、アメリカの大学でMBAを取得なさったと、営業課長の曽根からおうかがいしましたが」と言うが、さて、その敬語は正しいのか?
山本くんも成長したなあ。「MBAを取得された」ではなく「MBAを取得なさった」と、より改まった尊敬語を使っているね。
そうね。でも後半はどう?どこかおかしなところはないかしら。
自分が「聞いた」ということを謙譲語を使ってちゃんと「おうかがいしました」って言っているよね。あれ?でも、「聞く」の謙譲語は「うかがう」だよね。「おうかがいする」って何?
「おうかがいする」は「うかがう」を「お~する」という謙譲語の形にあてはめたものよ。
それじゃあ二重敬語だね。だから山本くんの言ってることはおかしいってこと?
そうではないの。「おうかがいする」は確かに二重敬語だけどね。すでに「聞く」の謙譲語として一般的に使われている言葉だから、問題ないわ。むしろ、単に「うかがう」とだけ言うと、丁寧さが欠けていると思われる場合もあるくらいでね。
じゃあ、山本くんの発言に問題はないじゃない。
いや、それがあるのよね。この場面で自分の「聞く」を、謙譲語で言うのは適切じゃないの。
えっ、目上の人と話しているのにどうして!?
「おうかがいしました」の前に「課長の曽根から」がついてるからよ。曽根課長は山本くんの会社の人だから、山本くんの身内でしょ。「課長の曽根からおうかがいしました」というと、お客である中田さんよりも、身内である曽根課長を丁寧に扱ったことになってしまうのよ。
そうかあ。じゃあ、同じく謙譲語の「お聞きする」もダメってことだね。
そうね。たとえば、「中田さんがMBAを取得した」ことを教えてくれたのが、中田さんと同じ職場の伊藤さんだとしましょうか。その場合は、「中田さんがMBAを取得なさったと、伊藤様からおうかがいしました」「「中田さんがMBAを取得なさったと、伊藤様からお聞きしました」のように、「おうかがいしました」「お聞きしました」を使うのが適切なんだけど。
教えてくれたのが身内の人だという場合は、どう言えばいいの?
単に「聞いております」が正解よ。
でも「中田さんは、アメリカの大学でMBAを取得なさったと、営業課長の曽根から聞いております」かあ。なんだか丁寧さに欠けるような気がするんだけどなあ。
うん、敬語の使い方としては正しいんだけど、確かにそうなのよねえ。そこでおすすめなのが、今から言う方法。「営業課長の曽根から」をとってみて。
「中田さんは、アメリカの大学でMBAを取得なさったと、おうかがいしました」。なるほど、これなら身内を持ち上げることなく、丁寧な言葉使いをすることができるね。
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