パーティー会場での、山本くんと取引先銀行の中田さんの会話です。中田さんがフランスにも留学したことがあるときいて、「フランス語をお話しになれるんですか?」と質問した。横で服部課長がハラハラしながら部下の山本くんのようすをうかがっているが、どうして?
うーん、危険だわ。まあ、中田さんは喜んでいるみたいだからよかったけど…。
え?山本くん、何か間違ってる?「話す」の尊敬語「お話しになる」に「○○できる」という意味をあらわす言葉「れる」をつけて「お話になれる」。問題ないんじゃないの?
ええ。敬語としては問題ないわ。ただ、目上の人に対して「○○ができるか」と問うのは、失礼とされているのよ。これもマナーの話になってしまうんだけど。
そういえば「ゴルフがおできになりますか?」なんて言わないし、言ったとしたらすごく失礼な感じだよね。
ええ。相手がゴルフができなかった場合のことを考えてみてよ。
恥をかかされたと思うだろうね。でも、できるかどうか聞きたい場合もある。どうすればいいのかなあ。
ゴルフなどスポーツについては、「できるかどうか」ではなく、「するかどうか」をたずねるといいわ。「しますか?」の尊敬語「なさいますか?」を使って「ゴルフをなさいますか?」という具合にね。あるいは、「ゴルフはお好きですか?」でもいいわね。
なるほど。「ゴルフをなさいますか?」とたずねると、「いや、一度やってみたんだが向いてないようでね」とか「入社以来やっているから、かれこれ30年になるかなあ」なんて反応が返ってくるだろうから、そこからその人がゴルフができるかどうかは分かることだもんね。じゃ次、フランス語の場合は?
語学の話題は、こちらから振らない方が無難ね。とくに英語はダメ。できないことをコンプレックスに感じている人も多いから。
でも、中田さんの場合は、留学経験があるという話を受けてのことだから、振ってもいいんじゃないの?実際、自分の語学力を自慢できてうれしそうだよ。
今回はラッキーだったわね。留学していたからといって、フランス語が話せるとはかぎらないでしょ。
そうか、中田さんがたまたまフランス語自慢の人でよかったということなんだね。
そうそう。相手がその言語が得意だということが分かっている場合を除いて、話を振らない方がいいわよ。そして、得意なことが分かっている場合も、「できる」という形では言わないこと。
「お話しになれるんですか」は、やはり失礼なんだね。
ええ。「フランス語がご堪能だとうかがっておりますが、」などと前置きして具体的な質問をするのがいいでしょうね。
大人の世界は難しいねえ。
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