立食式のパーティーで、同じテーブルについたお客さま同士の話がはずんでいる。気をきかせて料理と灰皿を取りに行った山本くん。しかし、戻る道すがら、「料理」は「お」をつけて「お料理」と言ったほうがいいのか、「タバコ」には「お」をつけて「おタバコ」と言った方がいいのかわからなくなってきた。さて「料理」「タバコ」?「お料理」「おタバコ」?
うーん、まず、「タバコ」だけど、さっき店長の中山さんは、お客さんに「おタバコはお吸いになりますか?」と言っていたなあ。でも、山本くんが「おタバコ」というと、なんだか違和感があるよ。
確かにそうね。
山本くんが男だからかなあ?
うーん、おそらく男女の区別がどうこうという問題ではないと思うわ。「おタバコ」は「タバコ」の丁寧な言い方なんだけど、あまり一般的ではなくて、主に接客業の人が使う言葉というイメージがあるの。中山さんが使っても違和感がないのは、店員として言っているからじゃないかしら。
なるほど。山本くんが男だから違和感じゃなくて、ビジネスマンとしてパーティーに参加してる場面で言うから、変な気がするのか。
そうね。山本くんが店員としてサービスするという立場にいたら、「おタバコ」といっても違和感はないと思うわよ。
同じものでも、どの立場の人が言うかによって「お」をつけるべきかどうか変わってくるんだなあ。じゃ、今日の山本くんの場合は「タバコをお吸いになりますか?」がいいんだね?
まあ、そうね。ただ、モノの名前に「お」をつけるかつけないかというのは、好みで決まる部分もあるから、これが正解!という基準はないのよねえ、実は。
うーん、はっきりしないなあ。
とりあえず、自分のモノにはつけないというのが基本ね。「ちょっとおタバコを吸ってまいります」は明らかに変でしょう?
なるほど!
モノが目上の人のもので、「お」をつけたほうがいいような気がする場合には、まず「お」をつけてみるといいわね。その上で、自分の表現したいイメージとズレがあったら外すというようにすればいいんじゃないかしら?
自分の表現したいイメージ?
たとえば「デキるビジネスマン」とか、「物腰やわらかな人」とか、つまり人にどう見られたいかということなんだけど。
なるほどなあ。「物腰やわらかな人」と見られたければ、「おタバコはお吸いになりますか?」と言うようにするとか、そういうことだね。
そうそう、そういうこと。では、次の「お料理」いってみましょうか。
うーん。「おタバコ」よりは一般的な気がする。ただ、自分が出す料理を「お料理」っていうのは、変な気がするんだよね。
料理を自分側のものととらえるのであれば、山本くんがつけるのも、店員の中山さんがつけるのもヘンってことになるわね。じゃあ、逆に出されたお客さんが「お料理」というのはどうかしら?
これはさっきの「おタバコ」と同じ好みの問題かなあ。物腰やわらかい印象を持ってもらおうと思ったら「けっこうなお料理をいただきまして」と言うとかね。
そうね。では、「お酒」はどうかしら?
これは出す側として言う場合にも、「お」をつけないとがさつな印象だな。「酒をもっと召し上がりますか?」なんていうのは、親しい上司なら通用しそうだけど、少なくともあらたまった場面ではつけたほうが無難じゃないかなあ。
そうね。「お酒」は「おタバコ」「お料理」にくらべて「お」をつけるのが一般的といえるわね。さて、他にビジネスシーンで「お」をつけても不自然でない言葉をいくつか挙げてみましょうか。まずは「茶」。「茶をください」って言わないわね。
なんだか武士みたいだな。通常「お茶をください」だよね。
あと「お湯」って言葉も定着してるわね。
「お車」「お薬」はどう?
そうねえ。秘書的な立場の人ならありでしょうね。
なるほどー。店員さんとか、秘書の人とか目上の人の面倒をみる立場の人だと「お」をつける幅が広がるんだねえ。
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