山本くんと西川課長が別室でミーティング中、取引先の会社の人から山本くんあての電話がかかってきた。自分の担当外のことについて詳細を聞かれた池田さんは「その件につきましては、担当に直接うかがってください」といったのだが、それを聞いていた服部課長のメガネがキラリ。さて、どこがおかしい?
犬山くん 山本くんと西川課長、遅いなあ。
小秋先生 ミーティングが白熱しているのかしら。
犬山くん さっきから二人あての電話がじゃんじゃんかかってきて、池田さんがだんだんイライラし始めたよ。
小秋先生 気持ちはわかるけどね。でも、「うかがってください」はないでしょう。
犬山くん そうだよねえ。取引先の人の「聞く」「たずねる」を、ちゃんと尊敬語で「うかがう」って言っているのはいいけれど、もう少していねいに「おうかがいください」って言わなきゃね。
小秋先生 え?
犬山くん え?ちがうの?
小秋先生 「うかがう」は尊敬語じゃなくて謙譲語でしょ!自分が目上の人から何かを聞いたり、目上の人に何かをたずねたりすることをあらわす言葉よ。
犬山くん あっ、そうだった!「うかがう」は「聞く」「たずねる」の謙譲語だったね。「ちょっとうかがいますが、このへんに銀行はありますか?」なんて具合に使うんだよね。
小秋先生 そうそう。取引先の人が聞いたりたずねたりすることを、「うかがう」なんて言ってはだめよ。
犬山くん 「おうかがいください」とか「おうかがいになってください」とかいう風に、丁寧に言ってもダメなの?
小秋先生 ダメ。謙譲語は、いくら丁寧な形にしても目上の人については使えないから気をつけてね。
犬山くん わかった!よし、池田さんの言ったことを正しく言いなおしてみよう。まず「聞く」「たずねる」の尊敬語は何だったかな。
小秋先生 「お聞きになる」または「おたずねになる」よ。
犬山くん お願いの形にすると「お聞きになってください」「おたずねになってください」となるのかな?
小秋先生 そうよ。
犬山くん 池田さんの言ったことを言いなおすと「担当者に直接お聞きになってください」「担当者に直接おたずねになってください」だね。
小秋先生 ええ。それから「聞く」「たずねる」には、「お聞きくださる」「おたずねくださる」という尊敬語もあるわ。
犬山くん お願いの形にすると、「お聞きください」「おたずねください」だね。「担当者に直接お聞きください」「担当者に直接おたずねください」か。ちょっとつきはなした印象かな。
小秋先生 そうね、前の「お聞きになってください」「おたずねになってください」のほうが、お願いしているって感じで、やわらかい印象ね。
犬山くん あと、「聞く」「たずねる」には「聞かれる」「たずねられる」っていう尊敬語もあったんじゃなかったっけ。お願いの形にすると、「聞かれてください」「たずねられてください」かな?
小秋先生 あ、それはダメ。「れる」で終わる尊敬語に「ください」をつけるのは、日本語として適切でないとされているのよ。
犬山くん そうかあ。あやうく恥をかいてしまうところだったよ!
小秋先生 わかった?じゃあ犬山くん、最後に池田さんの発言を正しく直してみてくれる?
犬山くん よし!「担当者に直接うかがってください」は×なんだよね。正しくは「担当者に直接お聞きください」か「おたずねください」、それか「お聞きになってください」か「おたずねになってください」だね。
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