
昨日、山本くんの退社後に、取引先の渡辺さんという人から電話があったらしい。メモを見て、こちらから電話をかけ、「タカラ物産の山本と申しますが、開発部の渡辺さんはおられますでしょうか?昨日、お電話をいただいたようなのですが」と、取次ぎを願う山本くん。一聴するとスムーズに敬語をあやつっているようだが、果たして本当にそうか?

「山本といいます」を「山本と申します」「電話をもらったようなのだけど」を「電話をいただいたようなのですが」って言うのは、正しい敬語だよね。

そうね。「申す」は自分が「言う」ことの改まった表現、「いただく」は自分が目上の人から「もらう」ことよね。正しい敬語よ。

それから「渡辺さんはいますか」を、敬語を使って「渡辺さんはおられますか」と言っている。うん、とくに問題はないみたいだね!

え!?ちょっと待って!よその会社の渡辺さんが「いる」かどうかを、たずねているのよ。

分かってるよ。よその会社の渡辺さんは、山本くんにとって目上の人にあたるんだよね。だから、山本くんは、渡辺さんの「いる」を、尊敬語を使って「おられる」って言っているんだ。

「おられる」は尊敬語じゃないわよ。

えー!?そうなの?「いる」の尊敬語は「いらっしゃる」「おられる」じゃないの? 「渡辺さんはいらっしゃいますか」「渡辺さんはおられますか」どっちでもいいのかと思っていたよ。

いいえ、「おられる」は、自分の「いる」をあらたまった言い方「おる」に「れる」をつけて尊敬語っぽくしたものよ。目上の人の「いる」を「おられる」なんて言ってはだめよ。

そうかあ、「おる」は自分の「いる」のあらたまった言い方なのかあ。たとえば、山本くんが「私は今日の午後なら社におります」と言うのは、正しい使い方なんだね。でも、「おられますか?」ってよく耳にするような気がするんだけど。

そうね。確かに「おられますか?」を使っている人も多いわ。もし、職場の上司とか先輩が「おられますか?」を使っていたら、それに合わせた方が、角が立たなくていいかもしれないわね。ただ、正しい言い方は「いらっしゃいますか?」ということを、おぼえておいてね。

うん、分かった!「渡辺さんはいますか?」を正しく敬語で言うと「渡辺さんはいらっしゃいますか?」なんだね。

ええ。あと、取引先の会社に電話をする場合には、「ご在席でしょうか?」というのもアリよ。

「渡辺さんはご在席でしょうか?」か。なんだかビジネスっぽくていい感じだね。
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