
山本くんと西川課長が別室でミーティング中、取引先の会社の人から山本くんあての電話がかかってきた。自分の担当外のことについて詳細を聞かれた池田さんは「その件につきましては、担当に直接うかがってください」といったのだが、それを聞いていた服部課長のメガネがキラリ。さて、どこがおかしい?

山本くんと西川課長、遅いなあ。

ミーティングが白熱しているのかしら。

さっきから二人あての電話がじゃんじゃんかかってきて、池田さんがだんだんイライラし始めたよ。

気持ちはわかるけどね。でも、「うかがってください」はないでしょう。

そうだよねえ。取引先の人の「聞く」「たずねる」を、ちゃんと尊敬語で「うかがう」って言っているのはいいけれど、もう少していねいに「おうかがいください」って言わなきゃね。

え?

え?ちがうの?

「うかがう」は尊敬語じゃなくて謙譲語でしょ!自分が目上の人から何かを聞いたり、目上の人に何かをたずねたりすることをあらわす言葉よ。

あっ、そうだった!「うかがう」は「聞く」「たずねる」の謙譲語だったね。「ちょっとうかがいますが、このへんに銀行はありますか?」なんて具合に使うんだよね。

そうそう。取引先の人が聞いたりたずねたりすることを、「うかがう」なんて言ってはだめよ。

「おうかがいください」とか「おうかがいになってください」とかいう風に、丁寧に言ってもダメなの?

ダメ。謙譲語は、いくら丁寧な形にしても目上の人については使えないから気をつけてね。

わかった!よし、池田さんの言ったことを正しく言いなおしてみよう。まず「聞く」「たずねる」の尊敬語は何だったかな。

「お聞きになる」または「おたずねになる」よ。

お願いの形にすると「お聞きになってください」「おたずねになってください」となるのかな?

そうよ。

池田さんの言ったことを言いなおすと「担当者に直接お聞きになってください」「担当者に直接おたずねになってください」だね。

ええ。それから「聞く」「たずねる」には、「お聞きくださる」「おたずねくださる」という尊敬語もあるわ。

お願いの形にすると、「お聞きください」「おたずねください」だね。「担当者に直接お聞きください」「担当者に直接おたずねください」か。ちょっとつきはなした印象かな。

そうね、前の「お聞きになってください」「おたずねになってください」のほうが、お願いしているって感じで、やわらかい印象ね。

あと、「聞く」「たずねる」には「聞かれる」「たずねられる」っていう尊敬語もあったんじゃなかったっけ。お願いの形にすると、「聞かれてください」「たずねられてください」かな?

あ、それはダメ。「れる」で終わる尊敬語に「ください」をつけるのは、日本語として適切でないとされているのよ。

そうかあ。あやうく恥をかいてしまうところだったよ!

わかった?じゃあ犬山くん、最後に池田さんの発言を正しく直してみてくれる?

よし!「担当者に直接うかがってください」は×なんだよね。正しくは「担当者に直接お聞きください」か「おたずねください」、それか「お聞きになってください」か「おたずねになってください」だね。
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