池田さんが取引先の会社に電話をして、担当の人を呼び出してもらおうとしたところ、その人は席を外していると言われた。そこで、「左様でございますか、では、お戻りになりましたら、タカラ物産の池田から電話があったとお申し伝えください」とお願いしたのだが・・・。
池田さん、混乱してるわねえ。社外の人、すなわち目上の人に「伝えてください」ってお願いするときに「お申し伝えください」って言っちゃダメだってば。
あれ?でもさ「申し伝える」の「申す」は、単に「言う」の改まった表現だったよね。「目上の人に言う」って意味はないからこそ、外の人から自分の会社の人に伝言することを「申し伝える」って言ってもいいんじゃなかったっけ。
確かにね。例えば取引先の加藤さんから上司である服部課長への電話の応対で、「加藤様からお電話がありましたことを服部に申し伝えておきます」って言っても失礼にならないのは、この場合の「申す」に「目上の人に言う」って意味はないからなんだけど…
じゃあ、「タカラ物産の池田から電話があったことをお申し伝えください」って言っても、失礼にならないからいいいんじゃないの?
いいえ、いくら謙譲の意味がないといっても、「申す」は、あくまでも自分が改まってものを言うことを表す言葉だからね。取引先やお客など目上の人の「言う」を「申す」とは言わないようにね。たとえ「お申し伝えください」と尊敬語っぽくしてもだめよ。
そうかあ、じゃ、目上の人、この場合は他社の受付の女性だよね。その人に「伝えてください」とお願いするときは、どう言えばいいの?
「伝える」は相手のすることだから、尊敬語「お伝えください」を使うのが適切よ。
「タカラ物産の池田から電話があったと、お伝えください」かあ。今のように取引先に電話をして、受付の人に、その会社の人への伝言を頼む場合は「お伝えください」なんだね。
そうそう。
じゃ、取引先を訪問中の自社の誰かへの伝言を、その取引先の受付の人に頼む場合は?
これも「お伝えください」でOKよ。「恐れ入りますが、御社におうかがいしております服部にお伝えくださいますでしょうか?」という感じね。
じゃあ、目上の人に伝言を頼む場合は常に「お伝えください」でOKなんだね?
そうね。もしくは「伝言する」の尊敬語「ご伝言くださる」を使って「ご伝言ください」でもいいわね。
「タカラ物産の池田から電話があったとご伝言ください」か。なるほどね。
あと、「伝えてください」ではなく、「伝えてもらえますか?」とお願いするという方法もあるわね。
「伝えてもらう」かあ。同じことを自分の側から表現するわけだね。
そうそう、「ください」より「もらえますか」のほうが下手に出ているような印象があるので好感を持たれやすいのよね。お願いを聞いてもらえる確率も高くなるかも。
なるほどなあ。えーと、「伝えてもらう」を謙譲語にすればいいんだよね。「もらう」を謙譲語「いただく」にして、「伝えていただく」でいいのかな。それをお願いの形「伝えていただけますか?」として、「タカラ物産の池田から電話があったと伝えていただけますか?」と言えばいいのかな?
うーん、それでもいいけど、少し丁寧さに欠けるわね。「伝えてもらう」の謙譲語「お伝えいただく」を使って「お伝えいただけますか?」の方がいいかな。
「タカラ物産の池田から電話があったとお伝えいただけますか?」か。確かにこの方が丁寧だね。
あと、もう少し丁寧に言いたいなら、「お伝えいただけますでしょうか?」もあるわよ。
「タカラ物産の池田から電話があったとお伝えいただけますでしょうか?」だね。ここまで言われたら、絶対忘れずに伝えてあげようって気になるね!
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