
取引先の渡辺さんが、今日、山本くんの会社を訪問したいと言う。そこで山本くんが「それでは、本日3時におうかがいください」と言ったら、渡辺さんはなぜか半笑い。ちゃんと敬語を使って言ったつもりなのに、何故?

笑ってくれる人でよかったわ。相手が服部課長みたいなうるさ型だったら、大変なことになるところよ。

うん。「うかがう」は自分が目上の人のところへ行くことを言う敬語なんだよね。自分が、取引先の会社やお客さんのところに行くときに「おうかがいします」と言うのはいいんだ。「では、本日3時におうかがいします」とかね。

そうそう、だから目上の人にあたる取引先の人に「来て下さい」という時に、「うかがう」を使っちゃいけないのよね。たとえ「おうかがいください」と尊敬語っぽい言い方をしてもダメよ。

正しい敬語を使って、取引先の人に「来てください」とお願いするには、どう言えばいいのかな。えーと、「来られてください」かな?

うーん。確かに「来る」の尊敬語には「来られる」というのもあるけれど、「来られる」に「ください」をつけて「来られてください」とすることはできないわよ。

えっ?そうなの?

ええ。「来られる」「食べられる」「読まれる」のように「れる」で終わる尊敬語に「ください」をつけてお願いの形にするのは、日本語として変だとされているの。だから「本日3時に来られてください」なんて言ったら、「こいつわかってないなあ」と陰でバカにされることうけあいよ。

へえー、そうなのかあ。気をつけなきゃ!えーと、「来る」の尊敬語には他に何があったっけ?

「いらっしゃる」よ。

あれ?でも、「いらっしゃる」は「いる」の尊敬語じゃなかったっけ?

そうよ。でも、「いらっしゃる」は目上の人の「来る」をあらわすこともできるのよ。

へえーそうなのかあ。じゃ「応接室にいらっしゃってください」で、「応接室にいてください」「応接室に来てください」2つの意味を表すことができるんだね。

そうね。まぎらわしい場合は、「お越しください」を使ってもいいわよ。

「お越しください」?

そう。あと、「お越しになってください」ともいえるわね。「来る」の尊敬語には「お越しになる」というのもあるのよ。

「取引先の渡辺さんが来る」は「取引先の渡辺さんがお越しになる」と言うこともできるんだね。で、「本日3時に来てください」という場合は「本日3時にお越しください」「本日3時にお越しになってください」という言い方ができると。

そうそう。

あと、「いらっしゃる」を使った場合は、「本日3時にいらっしゃってください」となるんだよね。

ええ。少しシンプルな言い方として「いらしてください」という表現もあるわよ。

「本日3時にいらしてください」かあ。たくさんありすぎて、分からなくなってきたよ。

そうねえ、仕事の場面でよく使われるのは「お越しください」「お越しになってください」かしら。「いらしてください」「いらっしゃってください」は、どちらかというと個人的に人を招く場合に使うのがふさわしいような気がするわ。

ビジネスの場面では、「お越しください」がいいんだね。よし、とりあえずそれを押さえておこう!
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