
今日は会社主催の会食が、中山さんが店長をつとめるグループ店舗の「すみれ庵」で開催される。銀行や取引先の人も来るというので、中山さんは開会前のミーティングでアルバイトの子に接客マニュアルを徹底するよう指導しているのだが、さて。

ねえねえ、「お召し上がりになられますでしょうか?」って、くどくない?

そうね。舌をかみそうね。

えーと、お客さんに「何を飲むか?」ってたずねる場面だよね。「飲む」の尊敬語は「召し上がる」だから…「お飲み物は何を召し上がりますか?」でいいんじゃないの?

そうね。ただ、この場合は、店員さんがお客さんに向かって言うわけでしょ。

ふんふん?

最近、どこでも店員さんの敬語って過剰気味だから、「お飲み物は何を召し上がりますか?」では、丁寧さが足りないと思うお客もいるかも。

確かに、ちょっとそっけない感じはするね。

そこで、尊敬語「召し上がる」を、さらに尊敬語の形「お~になる」にあてはめて、「お召し上がりになる」としてみましょうか。

「お飲み物は何をお召し上がりになりますか?」少し印象が和らいだね。

でしょ?「お召し上がりになりますか?」は、確かに「二重敬語」ではあるんだけど、飲食店で敬語を使う目的は、お客様に気持ちよくなってもらうことなのでね。それに、敬語の重複も、この程度であれば一般的に認められているから、使っても問題はないわよ。

じゃあ、店員さんだけじゃなくて、一般の人、例えばビジネスマンが接待の場面なんかで使ってもおかしくないのかな?

ええ、「お召し上がりになりますか?」ならOKよ。

その点、マニュアルの「お召し上がりになられますでしょうか?」は、明らかにやりすぎだよね。「お召し上がりになる」に、さらに「れる」をつけて、「ます」の下にさらに「です」をくっつけている。

そうね。敬語を重ねすぎると、馬鹿丁寧な!人をおちょくっているのか!なんて怒ってしまう人もいるからね。注意が必要よ。

「でしょう」をはぶいて、「お召し上がりになられますか?」だけならどう?

うーん、「召し上がる」+「お~になる」+「れる」で、敬語が三重になっているわね。何かおかしいな?って思うお客さんは、けっこういるんじゃないかしら。

二重までならOKというふうにおぼえておいていいかなあ。

そうねえ、でも一概には言えないわね。例えば「いらっしゃられますか?」は二重だけど、何だかヘンでしょう?

あ、そうだね。何でも二重までならOKってわけでもないんだ。

「召し上がりますか?」などのように、そのままでは丁寧さに欠けるような気がするときに、もうひとつ敬語を重ねてみて、自然ならOKという風に考えればいいんじゃないかしら。

う~ん。なんだかややこしいなあ。とりあえず、「お召し上がりになりますか?」は二重だけどOK、とおぼえておくことにするよ。
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