聞き手の知らない自分の大事な人について話す
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同じ大学出身の取引先の上原さんと、学生時代の話をする王くん。今も交流がある自分のゼミの先輩が遊びにきたときの笑い話を披露しようと、「そういえば先日、ゼミの先輩が遊びにいらっしゃいまして」と話しはじめたのだが、上原さんはしらけた顔。どうして?

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犬山くん犬山くん

上原さんは、どうしてしらけてしまったのかなあ。


小秋先生小秋先生

上原さんと王くんは、大学は同じだけど学部は違うのよね?


犬山くん犬山くん

うん、上原さんは法学部、王くんは経済学部らしいよ。


小秋先生小秋先生

とすると、王くんのゼミの先輩なんて、上原さんにとっては無関係よね。なのに、王くんが「先輩が遊びにいらっしゃいまして」なんて、先輩が「来た」ことを尊敬語を使って言ったものだから、「あなたにとっては大事な先輩かもしれないけど、私は知りません」となってしまったのではないかしら?


犬山くん犬山くん

あーそうかあ、王くんにとっては「先輩」は目上の人にあたるけど、上原さんにとってはそうではないんだよねえ。


小秋先生小秋先生

そうそう。話相手と無関係な人のことを話題にする場には、いくら尊敬している人についてのことでも、尊敬語を使って言うのはやめたほうがいいわよ。


犬山くん犬山くん

上原さんに対しては「先日、ゼミの先輩が遊びにきまして」といった方がいいんだね。


小秋先生小秋先生

そうそう、同じように、その人に対して自分がすることを謙譲語を使っていうのもよくないわね。


犬山くん犬山くん

「大学のゼミの先輩を久々に飲みにお誘い申し上げたんですが」なんていうのはダメなんだね。


小秋先生小秋先生

そう!聞き手は、見ず知らずの人への尊敬を強要されているような気がして、不愉快な気分になってしまう可能性があるからね。自分の上司や先輩や先生、尊敬している人のことなどを話す場面では要注意よ。


犬山くん犬山くん

そういえば、後輩がある占い師の人に入れ込んでいてさ。「先生が、今月はピンク色のものを欠かさず身につけろとおっしゃったんです」なんていう度に、なんかモヤモヤしていたんだけど、違和感の正体はそういうことだったんだね。


小秋先生小秋先生

そうそう、「あなたにとっては尊敬する人かもしれないけれど、私には関係ないのになあ」という違和感を聞き手に与えてしまうってことなのよね。


犬山くん犬山くん

あと、「きょうも帰りに先生のところに参ります」とかね。困ったもんだよ、まったく。


小秋先生小秋先生

あ、ちょっと待って。後輩が犬山くんに対して「先生のところに参ります」と言ったことについては、いちがいに不適切とは言えないかもしれないわ。というのは、後輩が、単に「行く」のあらたまった言い方として、「参る」を使っている可能性もあるからなのよ。


犬山くん犬山くん

えっ、どういうこと?


小秋先生小秋先生

「参る」は行く先にいる相手が目上の人である場合だけでなく、単に「行く」「来る」の改まった言い方としても使うことができるのよ。例えば、「こちらでは雨が降って参りました」「週末は故郷の山口へ参ります」という具合よ。


犬山くん犬山くん

へえ~そうなんだ。じゃあ、もしかしたら、後輩も、その意味で「先生のところに参ります」と言ったのかもしれないね。


小秋先生小秋先生

そうね。後輩が犬山君に対して「今日も先生のところへうかがいます」と言ったとしたら不適切ということになるけれど、「先生のところへ参ります」ならかまわないわよ。

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