山本くんが石橋部長から頼まれた西川課長への伝言の内容は、「席に戻ったらミーティングルーム3番に来るように」というものだった。山本くんは、席に戻った西川課長に、「課長、先ほど石橋部長から内線がありまして、戻ったらミーティングルーム3番に来るようにとおっしゃっていました。新しい受注管理ソフトの件だそうです」と言ったら、課長は微妙な表情を。
部長の「言った」を、「おっしゃった」という尊敬語を使って、「来るようにとおっしゃっていました」と言っている。ここは問題ないよね。
そうね、部長は、山本くんにとっても課長にとっても上司だからね。問題は、「戻ったらミーティングルームに来るよう」の「戻ったら」「来るよう」ね。
部長は「戻ったらミーティングルームに来るよう課長に言ってくれないか」と山本くんに言ったかもしれないけどさ、山本くんが課長にそれをそのまま伝えるのはまずいような気がするよ。
そうねえ。上司である課長本人の前で、課長の「戻る」「来る」を尊敬語を使わずに言うのは、ちょっと抵抗があるわね。実際、少しムッとしているようだしね。
かと言って、「戻る」と「来る」の尊敬語、「お戻りになる」「いらっしゃる」を使って、「お戻りになったらミーティングルームにいらっしゃるようにとおしゃっていました」と言うと、部長が課長に尊敬語を使っているみたいで、変だよね。
第一、わかりにくいわね。誰が戻ったのか、誰が行くのか、誰が言ったのか、1回聞いただけでは理解できない。
どうすればいいのかなあ?
そうねえ。課長のすることについては、丁寧さの低い尊敬語を使うという手が考えられるわね。
どういうこと?
部長には丁寧さが高い尊敬語を、課長には丁寧さが低い尊敬語を使うことで、2人の間に差をつけつつ、両方とも丁寧に扱うというワザがあるのよ。「戻る」を「お戻りになる」ではなく「戻られる」にするとかね。
「れる」がつく尊敬語は、丁寧さが少し低いんだよね。「戻られたらミーティングルームへ」か。だいぶ軽い印象になったね。
でも、問題は「来るように」なのよねえ。丁寧さが低い「来る」の尊敬語「来られる」を使って、「来られるように」と言うのも変だし。
「戻られたらミーティングルームに来られるようにと、おっしゃっていました。」か。確かに変だね。
うーん、あのね、要は部長が課長にミーティングルームに来るように言ったということを、課長に失礼がないように伝えればいいのよね。
うんうん。
いっそのこと、表現の仕方をがらっと変えてしまうというのはどうかしら?
と言うと?
「課長、先ほど部長が内線でお呼びでした。ミーティングルーム3番へいらしてください。新しい受注管理ソフトの件でお話があるそうです。」
「来るように言う」を「呼ぶ」に置き換えたんだね。「呼ぶ」のは部長だから、尊敬語「お呼びだ」を使って、「部長がお呼びでした」でいいわけだね。
そうそう。それから「ミーティングルーム3番へいらしてください」というのは山本くんから西川課長に直接向けられた発言だから、尊敬語を使っても問題ないわけ。
「行ってください」の尊敬語「いらしてください」を使って、「課長、ミーティングルームへいらしてください」でいいんだね。
そう。このように、目上の人に伝言をする場面で、伝言の内容をそのまま敬語にするのが難しい場合は、言い換えてしまうという手が使えるわよ。
なるほどねー。
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