受付担当から、自分を訪ねてきた他社の渡辺さんの来訪を告げられた山本くん。元気よく応接室にかけつけるところだが、「来られたので」は、いいのだろうか?
動詞に「れる」「られる」をつけると尊敬語になるものって、たくさんあるよね。「部長は新しい大河ドラマを見られましたか?」の「見られる」とか。
そうね、たいていの動詞は「れる」「られる」をつけると尊敬語になるわね。でも他の形の尊敬語もあるのに、何でもかんでも「れる」「られる」を使うのは、幼い印象を与えかねないので要注意よ。
それに「れる」「られる」は丁寧さの度合いが低いんだよね。例えば目上の相手の「見る」は、「見られる」より「ご覧になる」と言った方が、丁寧なんでしょ?
そうそう。「言う」だったら「言われる」より「おっしゃる」とかね。
お客さんの「来る」は「来られる」以外にどう表現できるだろう。「来る」の尊敬語は「いらっしゃる」だよね。「渡辺さんがいらっしゃったので」でいいのかな?
いいわよ。「いらしたので」という言い方もできるわね。他には?
「お越しになる」もいけるかな。「渡辺さんがお越しになったので」。
それもいけるわね。あと「お見えになる」という表現もあるのよ。「渡辺さんがお見えになったので」という風に使うの。
「お見え」って聞いたことがあるけど、僕が聞いたのは「お見えです」だったような気がするな。「お客様がお見えです」という感じで。
あ、そういえば「見える」の尊敬語には「お見えだ」という形もあったわね。「お見えです」は「お見えだ」の「だ」を丁寧語「です」にしたものよ。
じゃ「渡辺さんがお見えですので」もOKだね。尊敬語には「お~だ」という形もあるんだなあ。もしかして「お越しだ」もいいのかな?
ええ、「お越しだ」を使って「渡辺さんがお越しですので」もOKよ。
目上の人の「来る」は、いろいろな言い方で言えるんだなあ。結局「渡辺さんが来たので」は、「渡辺さんがいらっしゃったそうなので」「渡辺さんがいらしたので」「渡辺さんがお見えになったので」「渡辺さんがお見えですので」「渡辺さんがお越しになったそうなので」「渡辺さんがお越しですので」の6つ。あと、山本くんが言った「渡辺さんが来られたので」も入れると全部で7個もあるよ。「来られた」は、あまり使わない方がいいということだから除くとして、残り6つのうち、どれを使えばいいのかなあ。
そうねえ、仕事の場面でよく使われるのは「お見え」かしらね。とりあえず、「会社にお客様が来る」ことは「会社にお客様がお見えになる」とおぼえておくといいんじゃないかしら。それだけで、「来られる」を使うよりぐっと株があがるわよ。
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