タカラ物産グループ系列のレストランのひとつ「すみれ庵」で開かれるパーティーに出席予定のすみれ銀行の支店長から、少し遅れるという電話があった。電話を受けた金さんは、それを、パーティーの準備のためにすでにお店に来ていた本部の石橋部長に「すみれ銀行の支店長様が遅れて参られるそうです」と伝える。石橋部長は、今夜のことを思って不安そうだが、どうして?
取引銀行の支店長の「来る」を「参られる」って言っちゃ、まずいよね。
そうね。正しくは?
「来る」の尊敬語「いらっしゃる」「お越しになる」「お見えになる」を使うんじゃないのかなあ。
そうそう、金さんは、「遅れていらっしゃるそうです」「遅れてお越しになるそうです」「遅れてお見えになるそうです」って言わなきゃいけなかったのよね。じゃ、ここで質問。「参る」って何だったかしら?
自分や自分の身内の人が「来る」ことを、目上の人に対して言う謙譲語だよ。「佐藤様、恐れ入りますが、社長の小林は少々遅れて参ります。」っていう具合に使うんだ。
犬山くん、よくマスターしてるわね!「参る」は自分や自分の身内について使う。「お客さんが参られる」というと、そのつもりはなくても「お客さんがこの偉い私のところにやってくる」と言ったことになってしまうの。
お前は何様だ!って怒られてしまうよね。
そう、だから気をつけましょうね。さて、金さんの発言には、もう1点おかしなところがあるんだけど、どこかわかるかしら?
何だろう…あ、「支店長様」だ!
そう、支店長、社長、部長などの役職名は、それだけで相手を敬う呼び名になるので、「様」をつける必要がないのよね。
でも、「すみれ銀行の支店長が…」っていうと、偉そうじゃない?
うん、それは確かにそうなのよね。なので、職場によっては「役職名+様」で呼ぶのが習慣になっているから、その場合は無理せず「支店長様」「社長様」といっても構わないと思うわ。
あ、一人だけ違う言葉づかいをしていたら、仲間はずれにされるかもしれないって話だったよね。
そうそう。それに受け手の問題もあるわ。これまでずっと「支店長様」「社長様」と言っていた取引先の人が、ある日突然「支店長」「社長」と言ったら、どう思うかしら?
「あれ?何で急に態度変わったの?」って、不安になったり頭に来たりするかもね。
そうなのよね。言葉づかい一つで、相手の印象はガラッと変わってしまうの。そして、やっかいなのは、正しい敬語が最も丁寧に聞こえるというわけではないということなのよね。
それでも「支店長様」って言いたくないときはどうすればいいのかなあ。
一番いいのは、名前を覚えておいて、例えば、「すみれ銀行の上田支店長が」「支店長の上田様が」と言うことね。
なるほどなあ。電話を受けたときには名前をしっかり確認しておく必要があるんだね。
そう!相手としっかりした関係を持とうと思ったら、名前をおぼえておくことは必要よ。名前をおぼえていないことは、残念ながら敬語でカバーできるものではないということを、頭に入れておいてね。
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